【映画】『顔』 岡田茉莉子/笠智衆 1957年 松竹
松本清張と太宰治が同い年だと知ったとき、太宰治は過去の作家ではなく現代の作家なんだ、と新鮮な気持ちになったものだった。
この映画は、夥しい数が映画化されている清張作品のうちでも、最初の映画化作品である。
見どころは当時24歳の岡田茉莉子のとんでもない美貌、昭和30年代のレトロな風景、当時の人々の髪型やファッション、東京のネオン、可愛らしいデザインの自動車、電車などである。
『雪国』の岩下志麻もそうだったが、映画女優が遺伝子レベルでの真のエリートであった時代の女優の美人っぷりは神がかっている。演劇風の大げさな身振りや感情表現をする岡田茉莉子の、ワイルドな表情変化をたっぷり楽しむことができる。
事件の目撃者でキーを握る石岡を刑事たちが尾行するシーンがあるが、そこで現在「有楽コンコース」になっている有楽町のレトロなガード下を、彼らは通過するのである。そのシーンになったらすぐに、「あ、ここは有楽町のあそこだ!昔はこんなんだったのか」と気づいた。
有楽町駅ガード下 昭和レトロ ( 散歩 ) - bashou007のブログ - Yahoo!ブログ
次のカットでは改札に入り、ホームに上って、電車にのるシーンが続く。これは有楽町駅であろう。レトロな山手線が入ってくる。それにしても、ガード下のあの形状以外は、有楽町も様変わりしてしまったものである。
笠智衆は鬼刑事という設定だったらしいが、笠智衆で鬼の雰囲気は微塵も出ず、ほのぼのとした味わいのある刑事に見えてしまうのであった。
1950年代黄金期の映画界の活力を感じられる作品である。