ジェントルかっぱのブログ

読書、映画、美術鑑賞

2016-01-01から1年間の記事一覧

【映画】『市民ケーン』 オーソン・ウェルズ 1941年

この映画を観るにつけても思い出すのが『グレート・ギャツビー』である。 ケーンもギャツビーもそれほど悪人ではない。彼らは周囲の人に横暴な振る舞いをするどころか、とても気前よくする。ギャツビーは連日パーティーをするし、ケーンはライバル会社から引…

【映画】『Smoke』 ウェイン・ワン / ポール・オースター 1995年

クリスマス・イブの恵比寿ガーデンシネマで、特段の前提知識もないまま偶然この映画を観た。ジーンと感動した。クリスマスにふさわしい物語といえばディケンズの『クリスマス・キャロル』やケストナーの『飛ぶ教室』が定番であるが、この『Smoke』もクリスマ…

【映画】『白夜』 ルキーノ・ヴィスコンティ 1957年

Wikipediaにある「ナポリタン」という記事によると、ナポリタンスパゲティはイタリアのナポリで食べられているパスタとは何の関係もないそうだ。ナポリタンに限らず、焼き餃子やカレーライスの様に外国の料理が他国に渡って全く異なる味付けになるというのは…

【映画】『続・男はつらいよ』 山田洋次 1969年

寅さんシリーズ第2作。マドンナは佐藤オリエ。佐藤オリエは賀来千香子に少し似た細身で知的な感じのする美人で、彫刻家の娘である。劇中では東野英治郎扮する退職者英語教師の娘、寅さんのかつての同級生の役であった。 寅さんの悲劇の一因は自分より社会階…

【映画】『フラッシュダンス』 エイドリアン・ライン Flashdance (1983)

ブルース・リーの『燃えよドラゴン』を観たあとは叫んだり闘ったりヌンチャクを振り回したくなる。『フラッシュダンス』を観たあとは体を揺すったりポーズを決めたり踊ったりしたくなる。これは身体に働きかける映画なのである。 ストーリーは単純で、時々衝…

【美術鑑賞】『クラーナハ展―500年後の誘惑』 国立西洋美術館

前回訪れたときには咲き誇っていたイチョウの葉っぱを風が散らかしながら秋から冬に移行しつつある上野公園、世界文化遺産に登録が決まって絶好調の国立西洋美術館にクラナハの絵を観にいった。 世には、表向きは実名のFacebookで日々意識高い綺麗事やリア充…

【映画】『惑星ソラリス』 アンドレイ・タルコフスキー Солярис (1972)

ドイツの神聖ローマ帝国は1000年続いたが、ロシアのソビエト連邦は70年しか続かなかった。25年以上前に失われた帝国であるソ連が次第に伝説化してゆくなかで、ソ連製のSF映画というのは、人をワクワクさせるものがある。 最初に驚いたのは、1972年のソ連のSF…

【美術鑑賞】 『ゴッホとゴーギャン展』 東京都美術館

ゴッホとゴーギャン展 上野公園はイチョウの木の葉っぱが燃えるように色づいていて、まるで黄色い花が満開に咲き乱れているようだった。 ゴッホのメインカラーは黄色だったから、もし彼が秋のイチョウの木を描いていたら、さぞかし迫力のあるものになっただ…

【映画】『フランティック』 ロマン・ポランスキー Frantic

ポランスキーによるハードボイルドサスペンス映画。 主演のハリソン・フォードは外科医という設定なのだが、組織と対決するための戦闘スキルは戦略、戦術、判断力いずれも警察をしのぐ高さで、謎を追いかけて冒険をするパリに現れたインディ・ジョーンズにし…

【映画】『チャイナタウン』 ロマン・ポランスキー Chinatown

ポランスキーが親友のジャック・ニコルソンを念頭に置いて作ったハードボイルドな犯罪映画。1974年の作品であるが、舞台設定は1937年である。雰囲気は少々『グレート・ギャツビー』『ダーティハリー』などに似ているだろうか。最大の見所は1937年アメリカの…

【映画】『オーシャンズ11 』 スティーブン・ソダーバーグ Ocean's Eleven

ソダーバーグというと『トラフィック』『エリン・ブロコビッチ』『チェ』など社会派映画のイメージが強いのだが、これは純然たるエンタテインメント作品である。『スティング』『ミッション・インポッシブル』『ルパン三世』『キャッツ・アイ』を混ぜこぜに…

【映画】『ヒトラー 〜最期の12日間〜』 オリヴァー・ヒルシュビーゲル Der Untergang

ブルーノ・ガンツのキレ芸で高名なヒトラー映画。内容はヒトラー中心だけということはなく、軍人や民間人、ベルリン市街の様子なども描いているのだが、ブルーノ・ガンツのインパクトが強くて、よくパロディ化されるあのシーンがこの映画のイメージを代表し…

【瀕死語】「やっこさん」

小説などに出てくる言葉で、すぐに意味は通じるし、死語になってはいないものの、日常生活ではまず使わないし世代継承もされにくく、死語になってゆきそうだと推定されるものを、「瀕死語」と呼ぼう。 「やっこさん」 [名]《「やつこ」の音変化》1 下僕。…

【映画】『フルメタル・ジャケット』キューブリック FULL METAL JACKET

美しい映像表現を駆使して様々な位相の「狂気」を描かせたら右に出る者がいない、鬼才キューブリックのベトナム戦争映画。 反社会的人格の「狂気」(『時計じかけのオレンジ』)、悪霊に憑依された殺人鬼の「狂気」(『シャイニング』)、暴走するコンピュー…

【読書】神田古本まつり

土曜日に神田古本まつりに行った。すずらん通りの「キッチンジロー」で昼食をとり、腹ごしらえをしてから散歩へ。靖国通りを、駿河台下から神保町の交差点まで進む。岩波ホールで映画のパンフレットをもらい、岩波ブックセンターで新刊本の動向をチェックす…

【瀕死語】「いまいましい」

小説などに出てくる言葉で、すぐに意味は通じるし、死語になってはいないものの、日常生活ではまず使わないし世代継承もされにくく、死語になってゆきそうだと推定されるものを、「瀕死語」と呼ぼう。 「いまいましい」(トルストイ『アンナ・カレーニナ』よ…

【映画】視聴候補作品リスト

cinefil.tokyo 1.『メトロポリス』(1926/独) 監督:フリッツ・ラング2.『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922/独) 監督:F・W・ムルナウ3.『ドクトル・マブゼ』(1922/独) 監督:フリッツ・ラング4.『ナポレオン』(1934/仏) 監督:アベル・ガンス5.『大いな…

【映画】 『ジョーズ』 スピルバーグ JAWS

この映画を作成した時のスピルバーグは28歳だったそうだ。 主要人物の3人のキャラ立ちが、西遊記のように個性が分かれていて、面白い。ワイルドでアウトロー的な船長は孫悟空、真面目な警察署長は沙悟浄、少しお笑い担当の海洋学者は猪八戒のような、デコボ…

【映画】『風が吹くまま』 キアロスタミ The Wind Will Carry Us

小津安二郎を髣髴とさせる固定カメラを多用した構図で、写真のような美しい映像で古い村とテレビクルーの、死と生の境界線や往復を描いた作品。イランのクルド人村落に到着したテレビクルーの目的は村で行われる葬式を撮影すること。だがお目当ての病人はな…

【映画】『帰ってきたヒトラー』

イギリスEU脱退国民投票の翌日に鑑賞した。 これは荒唐無稽なコメディを装った、過激なドキュメンタリー映画である。 劇中劇という言葉があるが、この映画は劇中現実あるいは現実中劇である。現実と虚構があたかもヨーロッパのごちゃまぜ民族状況のようにモ…