ジェントルかっぱのブログ

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【美術鑑賞】『ティツィアーノとヴェネツィア派展』 東京都美術館

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フィレンツェ共和国とヴェネツイア共和国、この2つの都市国家は陰と陽である。

以前、東京都庭園美術館で開かれていた「メディチ家の至宝展」に行ったとき、メディチ家の人々の肖像画を沢山鑑賞した。数々の宝石や装飾品とともにあるその見かけの豪華さとは対照的に、彼らの肖像画から発する暗さ、支配しなければ支配される、殺らなければ殺られる権力闘争と陰謀に怯えて心の休まることのない一族の、呪われた不幸のオーラに圧倒されて、「メディチ家の毒」をたらふく浴びてげっそりとした気持ちになったものだった。

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今回のヴェネツイア派の絵画を観て感じたのは、その明るさ、自信、豊かさ、健康さ、前向きさである。観ているこちらまで明るい気持ちにされるものであった。
その中でも燦然と輝いていたのはティツィアーノの作品である。ローマ神話の花の女神フローラを描いた肖像画は、滑らかでミルクのようなつややかな肌、ふくよかで健康な肉体、美しくカールした金髪、きめ細やかなシワが描かれた衣装、きらめきパワーに溢れていた。作品から放たれるこの圧倒的なオーラに晒されたら、もううっとりとするしかないのである。

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ヴェネツイアの男性たちの肖像画はシックで、男前で、自信に溢れていて、「経済的な豊かさ」と「精神的な豊かさ」を保持して充実した人生を送った人たちの充実感が伝わってくるものであった。

SNSで例えるならば、フィレンツェはコンプレックスと誹謗中傷とバトルと怒りと怨念がうずまくツイッターのようなものであり、ヴェネツイアはリア充で自信に満ち溢れた人々が各々の「ドヤ」を発信し続けるインスタグラムのようなものである。

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