ジェントルかっぱのブログ

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【映画】『チャイナタウン』 ロマン・ポランスキー Chinatown

ポランスキーが親友のジャック・ニコルソンを念頭に置いて作ったハードボイルドな犯罪映画。1974年の作品であるが、舞台設定は1937年である。雰囲気は少々『グレート・ギャツビー』『ダーティハリー』などに似ているだろうか。最大の見所は1937年アメリカのファッション、自動車、建物である。私立探偵なのに上等の三つ揃えスーツをビシっと決めて帽子を被っているジャック・ニコルソンがとてもスタイリッシュだ。水道局や探偵事務所のオフィス、依頼人の自宅の玄関のドアなど建築もシックで惚れ惚れする。オープンのクラシックカーも眼の保養だ。とても力が入っている。

カッコーの巣の上で』『シャイニング』『恋愛小説家』『バットマン』など、ジャック・ニコルソンといえばちょっと頭のおかしい人から完全に狂った殺人鬼まで、様々なタイプ、様々なレベルの狂人を演じさせれば右に出る者がいない俳優であるが、この作品ではハードボイルドな私立探偵で、今まで観た中では一番狂人成分が少ない役柄であった。

代わりに狂っていたのは映画の内容で、要は社会の無秩序がテーマなのである。

ポランスキーといえば『戦場のピアニスト』であるが、あれも考えてみればナチスがユダヤ人に対して狂気の限りをつくす映画で、「自分の中に秘めている狂気」を「社会に顕現した狂気」に仮託して描いているという面では、共通したテーマを持っているのかもしれない。

この映画で重要な役割を演じるジョン・ヒューストンもやはりちょっとおかしい人で、ポランスキー、ニコルソン、ヒューストンといった、どこか頭のおかしい人たち、狂気を内に秘めた人たちが作った、とてもスタイリッシュでカッコいいハードボイルド犯罪映画という、観て損のない作品であった。