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【映画】『七人の侍』黒澤明/志村喬/三船敏郎 1954年 東宝

七人の侍』は、プロジェクトマネジメントの教材のような映画である。

プロジェクトは何らかの問題を解決するために行われる一連のプロセスである。

七人の侍』では、村に対する野武士による強奪が解決すべき問題として提示される。

最初にしなければならないのは、「ヒト・モノ・カネ」のリソース割り当てである。

「カネ」に相当するのは、今回の場合、村民による食料の提供である。

「モノ」は侍が持参する武器と、村にある一連の資材である。

「ヒト」は、まずプロジェクトを指揮するプロジェクトリーダーが必要で、これは志村喬演じる島田勘兵衛が担当する。メンバーは志村喬リクルートした6人、これに即席で訓練を施す村人男性陣が加わる。

プロジェクトのフェーズは野武士がくるまでの準備段階、野武士と戦う実践段階に分かれる。

準備段階では、リーダーの志村喬が現状を視察して確認し、プロジェクト計画書を作る。プロジェクト計画書は2つに別れている。一つは村全体の地図で、全体の戦略を立案するための最重要資料である。全ての作戦はこの資料をもとにして立てられる。もう一つはプロジェクトの組織図であり、これは平八が軍旗として作成する。

プロジェクトは成果物の作成によって終了する。今回の成果物は野武士団の命を奪うことである。この成果物リストは勘兵衛が作成する。これは地図の脇に書かれた40個の丸であり、一つの丸が一人の野武士を表す。

勘兵衛は敵を一人討ち取る毎にこの丸をバツにしていく、つまりタスク管理のチェックリストを兼ねているのだが、これがこの映画を見ていてプロジェクトっぽいなーと感じるところである。

今回の戦いで特徴的なのは、これが殲滅戦でありかつ総力戦だということである。勝利は敵の大将の首を取ることではなく、敵を一人残らず殺すことである。戦うのは武士だけではなく農民も一緒である。敵を一人ひとり中におびき入れて集団で討ち取る方式は、戦闘慣れしていない農民の戦闘力を十分に引き出すために勘兵衛が立案した優れた方式である。ただ、自軍が壊滅的な打撃を受けるまで、飛んで火に入る夏の虫のように殺されるために村に突入してくる、野武士達のマヌケっぷりは、まるでハリウッド映画で描かれるドイツ軍のようである。

もう一つ作戦として優れているのは決戦の前に行う夜襲である。事前に敵に打撃を与え一人でも多く殺すために行うゲリラ戦で、平八の戦死を出しながらも、野武士達のマヌケっぷりによりなんとか目的を達成する。

七人の侍』は三船敏郎が主人公的な扱いで、それはパッケージ写真などでの扱いからも察せられるのだが、私としてはこの映画の主人公は志村喬としたい。

経験豊富なプロジェクトリーダーが指揮したプロジェクトが目的を達成する物語としてこの映画を観ると、三船敏郎は個性的な選手かも知れないが、チームを指揮する志村喬監督の采配が、この戦いを勝利に導くために大きな役割を果たしたと思うのである。

なお今回新鮮な発見だったのは、イケメン若武者の勝四郎を演じた俳優が、『雪国』で岩下志麻の相手役を演じた木村功の若かりし姿だったということである。こういうのも昔の映画を漁って得られる楽しい発見の一つである。

【映画】『雪国』 岩下志麻/加賀まりこ 1965年 - ジェントルかっぱのブログ