【美術鑑賞】 『ゴッホとゴーギャン展』 東京都美術館
上野公園はイチョウの木の葉っぱが燃えるように色づいていて、まるで黄色い花が満開に咲き乱れているようだった。
ゴッホのメインカラーは黄色だったから、もし彼が秋のイチョウの木を描いていたら、さぞかし迫力のあるものになっただろう。
本展はゴッホとゴーギャンが共同生活をしていたことを軸にペアリングした展覧会で両者ほぼ同数の作品が展示されている。
ゴッホとゴーギャンはメインとする色使いが対照的で、ゴッホは寒い地方出身なのに、絵画では原色に近い鮮やかな色を重ねるが、ゴーギャンは南国に逃避したのに、くすんで渋い色づかいが多い。ゴーギャンはモミジやカエデのような赤さの色がお気に入りのようだったので、もし彼が今の季節の日本に来たら、紅葉の風景を彼独自の色彩で描いたであろう。
どちらかというとゴッホを目当てで行ったため、気に入った作品はゴッホのものばかりになった。
静物画、風景画、どれも良かったのだが、とりわけ気に入ったのは《ジョゼフ・ルーランの肖像》で、花を背負ったヒゲモジャのおじさんで、ヒゲがゴッホの渦々タッチでうねうね、眼はまつげが丁寧に描かれていて可愛らしく、どこかユーモラスで、色彩は鮮やかだった。
それと複数の子供たちが絵の前で模写ができるサービスを利用して、無心に絵を描いている様がとても心温まるものだった。幼少の頃からこういう本物を模写して見る目を養えるのは、とても羨ましい環境である。彼、彼女らからアーティストが生まれるのだろうか。良い企画である。