ジェントルかっぱのブログ

読書、映画、美術鑑賞

【映画】『ふたりのベロニカ』クシシュトフ・キェシロフスキ 1991年

かつてキェシロフスキの『トリコロール/青の愛』を渋谷のBunkamuraに観にいった時、観客のほとんどが女性で、「おシャレなセックスをするおフランス映画」に対する女性の食いつきっぷりの良さに圧倒されたものだった。内容は「おシャレでちょっとエッチな純…

【映画】『トップガン』 トム・クルーズ/ケリー・マクギリス 1986年 パラマウント

民主党支持者によるプロパガンダ画像。この画像には、プロパガンダの本質がとてもわかり易く表現されている。敵を醜く描き、味方を綺麗に描く。「価値」を構成する3要素「真・善・美」のうち、大多数の人間は「美」に最も強く影響される。「真」や「善」に…

【映画】『裏窓』ヒッチコック/グレース・ケリー 1954年

古今東西の映画を観る楽しみの一つに、美男美女の見目麗しい容姿を鑑賞するというものがある。グレース・ケリーはシンデレラストーリーと悲劇的な死、出演作品の少なさなどで伝説を作り出した、20世紀を代表する美人女優の一人である。彼女に対抗できるのは…

【美術鑑賞】『ミュシャ展』国立新美術館

私がミュシャの存在を知ったのは、書店で本を買ったときにもらった栞に、『四つの時の流れ』『四つの花』が使用されていたのを目にした時だ。これらの連作は栞にするのにちょうどよい縦横比率になっている。 そのときに抱いたのは、「ちょっとゴツい体形のお…

【映画】『七人の侍』黒澤明/志村喬/三船敏郎 1954年 東宝

『七人の侍』は、プロジェクトマネジメントの教材のような映画である。 プロジェクトは何らかの問題を解決するために行われる一連のプロセスである。 『七人の侍』では、村に対する野武士による強奪が解決すべき問題として提示される。 最初にしなければなら…

【映画】『赤ひげ』黒澤明/三船敏郎/加山雄三 1965年 東宝

昭和後期の1970年代、テレビではゴールデンタイムに必ず時代劇をやっていた。その中でも松下幸之助のナショナルがスポンサーをしていたものは『水戸黄門』が有名だが、他にも著名なものとして『大岡越前』がある。真面目なインテリ風の加藤剛が南町奉行大岡…

【番外編】国立科学博物館 常設展 上野恩賜公園

東京にある繁華街では新宿、渋谷が著名であるが、それらの追随を許さない圧倒的な立ち位置を持っているのが、上野である。これはそれぞれの出自からくる差であって、新宿は地名から推測できるように甲州街道の宿場町、渋谷は円山町のラブホテル街から推察で…

【映画】『沈黙』 遠藤周作/マーティン・スコセッシ 2017年 パラマウント/KADOKAWA

この映画の最大の見所は、俳優の演技、特に井上筑後守を演じたイッセー尾形の素晴らしい演技である。イッセー尾形というとコミカルな一人芝居が有名で、映画ではあまり見ない俳優である。 一見何も考えていないように見えて、実のところ鋭い分析力と戦略、戦…

【映画】『顔』 岡田茉莉子/笠智衆 1957年 松竹

松本清張と太宰治が同い年だと知ったとき、太宰治は過去の作家ではなく現代の作家なんだ、と新鮮な気持ちになったものだった。 この映画は、夥しい数が映画化されている清張作品のうちでも、最初の映画化作品である。 見どころは当時24歳の岡田茉莉子のとん…

【映画】『黒猫・白猫』 エミール・クストリッツァ 1998年 Black Cat, White Cat

ジプシーとユダヤ人はヨーロッパの歴史の中で、とても嫌われてきたことで有名な民族である。ユダヤ人は多数の実業家、政治家、学者、芸術家を輩出したり、第二次世界大戦を経て独立国家を持ったりして昔よりマシな待遇を受けているが、ジプシーはそんなこと…

【美術鑑賞】『ティツィアーノとヴェネツィア派展』 東京都美術館

フィレンツェ共和国とヴェネツイア共和国、この2つの都市国家は陰と陽である。 以前、東京都庭園美術館で開かれていた「メディチ家の至宝展」に行ったとき、メディチ家の人々の肖像画を沢山鑑賞した。数々の宝石や装飾品とともにあるその見かけの豪華さとは…

【映画】『刑事ジョン・ブック目撃者』 ハリソン・フォード/ピーター・ウィアー 1985年 パラマウント

ハリソン・フォードの刑事モノということで当初は『ダーティハリー』からダーティーさを取り払ったようなサスペンス・アクションだと思っていたところ、思わぬ内容にびっくりした。 これは昔TBSでやっていた『世界ウルルン滞在記』、この番組は山本太郎や玉…

【映画】『雪国』 岩下志麻/加賀まりこ 1965年

川端康成原作、大庭秀雄監督。当時24歳でとんでもなく美人の岩下志麻の表情や立ち振る舞いを惚れ惚れしながら鑑賞する映画である。 ロケ地は野沢温泉で、50年以上前の野沢温泉の風景や建物、外湯、蒸気機関車を観ることができる、貴重な映像資料でもある。映…

【映画】『トップ・ハット』 フレッド・アステア/ジンジャー・ロジャース 1935年

フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの超人的なダンスが炸裂する、ミュージカル映画の原点。『燃えよドラゴン』を観た人が、身体性に圧倒されて身も心もブルース・リーで一杯になってしまうのと同じで、この映画を見た人は身も心も、男はフレッド・…

【美術鑑賞】『デトロイト美術館展』 上野の森美術館

『ゴッホとゴーギャン展』『クラーナハ展』に続く、「上野 冬の美術展三部作」の三作目。上野公園の木々はすっかり葉が落ちて真冬のたたずまいであった。上野の森美術館は3館の中で一番小ぶりだが、作品のバリエーションは一番多様だった。 19世紀から20世紀…

【映画】『伊豆の踊り子』 吉永小百合/高橋英樹 1963年

監督は西河克己。50年以上前、東京オリンピックの前年に公開されたアイドル映画。吉永小百合も高橋英樹もまだ存命であるから、それほど昔ではないはずなのだが、実に54年も前の作品なのである。吉永小百合18歳、高橋英樹19歳。当時まだ存命中だった川端康成…

【映画】『スティング』 ジョージ・ロイ・ヒル The Sting 1973年

この映画は何も知らない状態で観て、映画製作者に「してやられる」のが一番楽しい観方だ。ストーリーをバラすのは野暮というものである。 1974年に公開されたジャック・ニコルソン主演の『チャイナタウン』は、舞台設定が1930年代後半のロサンゼルスであった…

【映画】『市民ケーン』 オーソン・ウェルズ 1941年

この映画を観るにつけても思い出すのが『グレート・ギャツビー』である。 ケーンもギャツビーもそれほど悪人ではない。彼らは周囲の人に横暴な振る舞いをするどころか、とても気前よくする。ギャツビーは連日パーティーをするし、ケーンはライバル会社から引…

【映画】『Smoke』 ウェイン・ワン / ポール・オースター 1995年

クリスマス・イブの恵比寿ガーデンシネマで、特段の前提知識もないまま偶然この映画を観た。ジーンと感動した。クリスマスにふさわしい物語といえばディケンズの『クリスマス・キャロル』やケストナーの『飛ぶ教室』が定番であるが、この『Smoke』もクリスマ…

【映画】『白夜』 ルキーノ・ヴィスコンティ 1957年

Wikipediaにある「ナポリタン」という記事によると、ナポリタンスパゲティはイタリアのナポリで食べられているパスタとは何の関係もないそうだ。ナポリタンに限らず、焼き餃子やカレーライスの様に外国の料理が他国に渡って全く異なる味付けになるというのは…

【映画】『続・男はつらいよ』 山田洋次 1969年

寅さんシリーズ第2作。マドンナは佐藤オリエ。佐藤オリエは賀来千香子に少し似た細身で知的な感じのする美人で、彫刻家の娘である。劇中では東野英治郎扮する退職者英語教師の娘、寅さんのかつての同級生の役であった。 寅さんの悲劇の一因は自分より社会階…

【映画】『フラッシュダンス』 エイドリアン・ライン Flashdance (1983)

ブルース・リーの『燃えよドラゴン』を観たあとは叫んだり闘ったりヌンチャクを振り回したくなる。『フラッシュダンス』を観たあとは体を揺すったりポーズを決めたり踊ったりしたくなる。これは身体に働きかける映画なのである。 ストーリーは単純で、時々衝…

【美術鑑賞】『クラーナハ展―500年後の誘惑』 国立西洋美術館

前回訪れたときには咲き誇っていたイチョウの葉っぱを風が散らかしながら秋から冬に移行しつつある上野公園、世界文化遺産に登録が決まって絶好調の国立西洋美術館にクラナハの絵を観にいった。 世には、表向きは実名のFacebookで日々意識高い綺麗事やリア充…

【映画】『惑星ソラリス』 アンドレイ・タルコフスキー Солярис (1972)

ドイツの神聖ローマ帝国は1000年続いたが、ロシアのソビエト連邦は70年しか続かなかった。25年以上前に失われた帝国であるソ連が次第に伝説化してゆくなかで、ソ連製のSF映画というのは、人をワクワクさせるものがある。 最初に驚いたのは、1972年のソ連のSF…

【美術鑑賞】 『ゴッホとゴーギャン展』 東京都美術館

ゴッホとゴーギャン展 上野公園はイチョウの木の葉っぱが燃えるように色づいていて、まるで黄色い花が満開に咲き乱れているようだった。 ゴッホのメインカラーは黄色だったから、もし彼が秋のイチョウの木を描いていたら、さぞかし迫力のあるものになっただ…

【映画】『フランティック』 ロマン・ポランスキー Frantic

ポランスキーによるハードボイルドサスペンス映画。 主演のハリソン・フォードは外科医という設定なのだが、組織と対決するための戦闘スキルは戦略、戦術、判断力いずれも警察をしのぐ高さで、謎を追いかけて冒険をするパリに現れたインディ・ジョーンズにし…

【映画】『チャイナタウン』 ロマン・ポランスキー Chinatown

ポランスキーが親友のジャック・ニコルソンを念頭に置いて作ったハードボイルドな犯罪映画。1974年の作品であるが、舞台設定は1937年である。雰囲気は少々『グレート・ギャツビー』『ダーティハリー』などに似ているだろうか。最大の見所は1937年アメリカの…

【映画】『オーシャンズ11 』 スティーブン・ソダーバーグ Ocean's Eleven

ソダーバーグというと『トラフィック』『エリン・ブロコビッチ』『チェ』など社会派映画のイメージが強いのだが、これは純然たるエンタテインメント作品である。『スティング』『ミッション・インポッシブル』『ルパン三世』『キャッツ・アイ』を混ぜこぜに…

【映画】『ヒトラー 〜最期の12日間〜』 オリヴァー・ヒルシュビーゲル Der Untergang

ブルーノ・ガンツのキレ芸で高名なヒトラー映画。内容はヒトラー中心だけということはなく、軍人や民間人、ベルリン市街の様子なども描いているのだが、ブルーノ・ガンツのインパクトが強くて、よくパロディ化されるあのシーンがこの映画のイメージを代表し…

【瀕死語】「やっこさん」

小説などに出てくる言葉で、すぐに意味は通じるし、死語になってはいないものの、日常生活ではまず使わないし世代継承もされにくく、死語になってゆきそうだと推定されるものを、「瀕死語」と呼ぼう。 「やっこさん」 [名]《「やつこ」の音変化》1 下僕。…